アプリスコアブログ

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【アプリヒットの着眼点1】日常の不の解消か、新しい価値創造か。リクルートホールディングス メディアテクノロジーラボ流アプリ開発の着想

 ヒットしているアプリは一体どうやって誕生したの?!

 

作ったアプリを広めるのに大切な事、方法って何?

 

そんな疑問のヒントになる記事のご紹介です。

今回はスマフォアプリのユーザビリティテストをパソコンから簡単に依頼ができるクラウドサービスを提供しているLaunchAppからの記事をご紹介します!

 

 

 

アプリをヒットさせてきた仕掛け人たちは、どのように開発をすすめてきたのか。

LaunchApp(ローンチアップ)スタッフが聞いてきました!

 

MTLチーフプランナー
松江氏

LaunchAppではヒットアプリを手掛けたプランナーや開発者へ、インタビュー企画を行うことになりました。記念すべき第1回目のインタビューに応じてくださったのは、リクルートホールディングス R&D戦略室メディアテクノロジーラボの松江氏です。
メディアテクノロジーラボ(以下MTL)では年間約30アプリも手がけており、今回ご登場頂いた松江氏はComingSoonersを始め、数々のヒットアプリを生み出しています。松江氏がプロデュースした『あさとけい』やMTLの思想について、アプリ企画や開発する際に役立ちそうなヒントを探ってみます。

女子大生とのコラボから生まれた『あさとけい』

 

「いつも通り目覚ましをかけて起きたはずなのに、なぜか家を出るのが遅れた」

 

という経験はないだろうか?


日々の生活で起こりうる身近な問題を解決するために、朝の目覚ましだけでなく家を出る時間もセットすることで、うっかり遅刻を解消する目覚ましアプリが『あさとけい』だ。

 

 

『あさとけい』を考えた背景や狙いは何だったのだろうか?

 

「去年の春くらいから、バジャコレというイベント主催をしている女子大生とコラボをして、彼女達のアイディアからアプリの企画開発を行ってみようということになりました」と松江氏。


まず最初に行ったのはパジャコレの部活という体裁で女子大生を30名ほど集めて、彼女たちから普段の生活でどんな不満や不憫さを感じているのか、ブレスト形式でアイディアを挙げてもらうことからスタートした。

 

9月に行われるパジャコレのイベントで発表出来るように、月1で定期的に集まって企画実行に移していった。

 

では、どのようにプロジェクトを進めていったのだろうか?

 

「1回目は30人程呼んで、5〜6グループに分けてアイディア出しを行いました。その際アプリに関しては素人の彼女たちをサポートする意味で、実際に開発をするMTLのスタッフが同席しました。会話の邪魔をしないようにしながら、リードをして要件を決めていくのも手助けしました」

 

そして、各グループでどのような「不」を解決するのかを発表する形式を取ったようだ。

 

「各グループごとに発表して、参加者の投票で1位2位を決めました。しかし、アプリ化した『あさとけい』はこの時1位はおろか、2位にもなりませんでした」


女子大生たちに人気がなかった『あさとけい』を松江氏はアプリ化することにした.....、

 

何故か?

 

 

「他のアイディアは既存のものであったり、差別化要因が見当たらなかった点が挙げられます。しかし、『あさとけい』の発想はいつも通り起きているのに、家を出るのが何故か遅れてしまう経験が誰にでもあり、それを解消出来る点に着目しました」


ユーザーが毎日使う習慣があり、日常の不を解消する機会がある、という観点でアイディアを評価したためだ。

 

それ以降は機能の要件やデザイン決め、リリースが迫るに連れ人数を絞って企画を練っていった。


レールをMTL側で敷いてあげて、彼女たちから意見やアイディアを引き出し、プロトタイプを作り形にしていくこのやり方は、まるで“Co -Creation”の開発プロセスそのものである。


このやりとりのポイントを「パジャコレのイベントで『あさとけい』を自分たちのモノだと発表させたかった。

 

自分たちのモノと思ってもらうには意見を引き出すことが重要です」と松江氏は語る。

 

普通の時計アプリとの差別化は生活者が朝起きた後にある

 

では、既存の時計アプリとの違いはなんだろうか?

 

「違うところは家を出るまでの時間を教えてくれる点です。 スムーズに朝起きて家出るまでを気持よくしたい、天気予報でも降水確率だけではなくて傘を持って行くべきかや、その日にどういう服装で行くべきかのアドバイスが得られます」


朝のうっかり遅刻を解消させる為に出かける時間のアラームと、それに対するカウントダウンを声でお知らせしてくれるところに価値を置いたようだ。

 

女子大生からはこの時間をメイク、ヘアセット、ご飯を食べる時間などのメニューを入力出来るようにしたいと要望があったようだ。


一方家を出るまでの時間を教えてくれるのだけでも良いという意見に分かれた。この判断を迫られた松江氏は「時間のプッシュさえあれば、後はユーザーが家を出るための指標となり動く。

 

わざわざヘアメイク、服を着替える時間、ご飯を食べる時間を入力するのは面倒だろう」という仮説を立てた。

 

一旦はシンプルなものにして、その後機能追加すれば良いと判断した。まずはリリースをして、ユーザーの反応を見ながら改善をしていく手法は、まさにリーンスタートアップの考え方である。

 

事実リリース後にヘアメイクや服を着替える時間を入力していきたい、という要望はユーザーからは寄せられていない。

 

メディアテクノロジーラボ流のプロダクトマネジメント

 

インタビューで頻発していたキーワードが「日常の不を解消する」というものである。生活者の日々の動向に着眼し、どういうところに不憫さや不満を感じているのか、を徹底的に洗い出し、 そこからサービスの構想をすることをMTLでは徹底されている。

1 着想は日常の不の解消か、新しい価値を創造するか?

「必ずどちらかを明確にします。そのアイディアを皆で揉む場を設けており、皆が評価した上で実行に移しているため、組織全体が納得感を持っています」


コンセンサスを取れた上で企画を実行に移しており、且つ意思決定のプロセスは大手企業にも関わらず、簡略化されている。

 

2012年9月にリリースした『あさとけい』は順調にダウンロードがされ続けており、2013年2月に入り10万ダウンロードを達成した。

 

「ちゃんと日常の不を解消するアプリであれば、ユーザーは使い続けてくれます。目覚まし時計は朝起きるために毎日使います。ダウンロードをしただけでは終わらないロイヤルユーザー(継続利用をしてくれているユーザー)は50%おり、ユーザーが定着しています。さらに週5回以上使うのが50%です。他にMTLからリリースした天気予報アプリも、同じような理由でダウンロードされ続けています」

 

スタートアップがビジネスを始める時に必ず自問する “must have” と “nice to have” をMTLでは「日常の不の解消」か「新しい価値創造」と言い表しているのかもしれない。

 

「ユーザーがつくかどうかは、本当に毎日使うものはよくダウンロードされるのは経験的に分かっています」とも松江氏は語っている。

 

2 どうやって流行らせるのかが、分からないアプリは流行らない

「リリース後にどうやって広がっていくのかが、イメージ出来ていないアプリは開発に着手しないようにしています。『あさとけい』の場合は企画に携わった女の子が自分たちの『モノ』だと言いふらしてくれるのと、モデルをやっている子たちはソーシャルでも影響力があるので、広まると確信していました」

 

現に『あさとけい』はプロモーション無しで、リリース直後にAppStoreのライフスタイルカテゴリで2位にランクインした。リリース後に行われるパジャコレのイベントにてお披露目をするつもりでいたが、企画に参加した女子大生たちが事前にTwitterなどで広めていてくれていたからだ。

 

これは松江氏が アイディア出しの時から女子大生の参加意識を醸成したのが功を奏した形となった。

 

また初速がついたため、リリースして4日で2万ダウンロードを達成している。

 

新しい価値創造に軸足を置いた「冒険カメラ」

 

今松江氏が取り組んでいるのは『冒険カメラ』というアプリだ。

 

日々のルーティン化した生活にちょっとした変化を促すために、お題に写真を投稿するというエッセンスを追加して、日々の生活を彩るための写真を投稿するアプリである。

 

Instargramに慣れ親しんだユーザーをターゲットにし、写真加工やフィルタリングのネクストレベルにチャレンジすることを目的としている。

 

 

 

このアプリは新しい価値創造タイプのため、受け入れられるかどうかの確認をする意味で松江氏はメディアとタイアップし、ユーザビリティテストのイベントを企画して一般テスターを募った。

 

テスターとしてはこのイベントに参加するメリットとして、以下の3つが挙げられる。

 

  1.  リリース前の新しいアプリを触れる
  2.  美味しい食事と飲み物が無料
  3.  ネットワーキングパーティー

 

『あさとけい』においても、女子大生には特に報酬は交通費以外は支払わずに何故30名も集められたかというと、ワークショップ後に他の女の子達と交流出来るネットワーキングの場を提供することと、自分たちが考えたアプリが世の中にでるという楽しみを価値として考えていたからとも言える。

 

ユーザーの巻き込み型開発で一工夫をしているのが伺える。

 

MTLの開発着想はまずユーザー有りきで、とてもシンプルでありながら、戦略的に進められている。

 

どうやって浸透させていくのかがイメージできていない場合は、ゼロベースで考え直すこともあるようだ。


また大企業といえば、プロモーション予算を大量につぎ込んで市場浸透を図るイメージが強いが、MTLではほとんど予算をかけずに開発段階から緻密なマーケティング戦略を実行していることが分かった。

 

 

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